冬場の入浴中に何故突然死が発生するのか

温度差の解消などの予防が大切

   日本では、入浴中の急死者(入浴死)が外国に比べて圧倒的に多く、厚生労働省統計で明らかな
「入浴中の溺死」(下グラフ)に心筋梗塞などの病死を加えると、実際には入浴死総数は溺死者数
の5倍近くに上ると推定されます。「入浴中の溺死」は年々増加しており、それに応じて入浴死数
も、高齢者だけで一万人を超えると推測されます。
   入浴死の発生は、65歳以上の高齢者に多く、11月から3月の寒い時期に集中しています。
死因別では、循環器系疾患や脳血管障害が過半数を占め、温度差による急激な血圧変化
(ヒートショック)が大きく影響していると考えられます。つまり、「寒い脱衣室や浴室から、
寒さ解消のために熱いお湯にゆっくりつかる」といった、日本人にとっては日常的な入浴行動が
事故につながる可能性が高いのです。入浴死の大半は、意外にも家族が同居の場合に多数発生して
います。万一事故が発生した時、早期発見が大切なのは言うまでもありません。
事故の発生を予防するために「高齢者の入浴中には家族が度々声をかける」ことはもちろん、

「脱衣場や浴室を暖房する(温度のバリアフリー)などを心がけ、「冬場熱い湯に長湯はしない」

「ぬるめのお湯に入る」など、入浴習慣そのものを考え直す必要もあるようです。
出展:厚生労働省人口動態統計「家庭における不慮の事故」より

冬場の入浴中突然死の原因

1,冬の入浴は要注意!

    冬の入浴中死亡事故が増加しています。11月から3月までの寒い時期に多く、特に12月と
1月に集中しており(図1参照)、しかも夜中の時間帯に集中しています(図2参照)
入浴という行為によってもたらされる血圧の変動が「脳出血」や「心筋梗塞」の引き金となり
浴槽内で溺死してしまう事が多いためと考えられています。平成15年は久しぶりに交通事故死者数
が8,000人を下回るという予測が発表されました。これに対して住宅内で発生する
不慮の事故で年間10,000人以上の人が亡くなっており、その約60%が入浴に関するものです。
その原因のひとつは溺死であり、しかも65歳以上の高齢者がその85%を占めています。
また民間の調査では自宅での入浴事故により、全国で年間14,000人の方が亡くなっていると
推定されており、実に驚くべき人数です。

2,高齢者、特に75歳以上の後期高齢者は要注意!

   入浴中の死亡事故者は男女差はないものの、年齢別の統計では、はっきりした違いがみられます。
すなわち、65〜74歳の前期高齢者が約27%であるのに対して、75歳以上の後期高齢者が
約73%と圧倒的に多くなっています。これは、血圧調整機能が低下した高齢者ほど入浴中死亡事故
に巻き込まれやすいという事を反映しています。冬の季節に、しかも高齢者に事故が多いのは居間と
浴室の著しい温度差に原因があるといわれています。暖かい居間から室温の低い脱衣場や浴室に
行くだけでも、高血圧症の人や血圧の調節機能が低下した高齢者にとっては危険が差し迫っていると
いっても過言ではないでしょう。

3,入浴中突然死が引き起こされる原因

   毎日の生活の中で一番リラックスできるのは風呂に入っている時かもしれません。一日の疲れを
癒してくれる入浴は日本人には欠かせない健康の源といえましょう。筋肉の緊張がほぐれ、開放感や
爽快感が得られる事は明日への活力につながります。しかし、高血圧症の人や血圧の調節機能が低下
した高齢者にとっては致命的な落とし穴にもなりかねないので注意が必要です。

@,入浴にともなう血圧の変動

        欧米の建物はどの部屋でも一定の温度になるように設計されていますが、日本の建物
        では冬の季節に暖房している居間と暖房していない脱衣場や浴室で10度以上の
        温度差も決して珍しくはありません。
         寒い脱衣場で衣服を脱ぐと、その寒さに反応して身体から熱が奪われないように
        毛細血管が収縮します。その結果、血圧が上昇し血のめぐりが悪くなります。
                   浴槽に入り熱い湯に触れると交感神経の緊張のため、急激に血圧が高くなる一方で
        欧米でシャワーを使った入浴スタイルが多いのに対して、肩までどっぽり湯につかる
        日本式入浴スタイルは心臓にかかる負担がおおきいといわれ、さらに血圧が上がる
        原因となっています。浴槽内で体があたたまると血管が拡張し血圧は急激に
        下降します。浴槽からあがると、体が冷えるので熱を奪われないようにと再び血管が
        収縮するという生理機能が働き、再び急激な血圧上昇が起こります。このように入浴
        の際はかなりの血圧変動があります。

A,血圧変動がもたらすもの

         血圧高い人や高齢者の方では入浴時の血圧上昇のため脳血管が破れて脳出血を
        引き起こしかねません。また、浴槽内で急激に血圧が下がると血液の流れが悪くなる
        上に、入浴による発汗のために血液の粘度が増して血管がつまりやすくなり
        心筋梗塞や脳梗塞が多くなります。最も多いのが心筋梗塞を代表とする循環器疾患で
        約70%を占めており、次いで脳内出血やくも膜下出血などの脳血管疾患が約18%
                   となっています。
4,入浴中突然死を防ぐ方法
 冬の寒さが厳しい福井、山形、富山などでは入浴中突然死の発生率が高くなっています。
しかし全館暖房が普及している北海道では冬の厳寒にもかかわらず入浴中突然死は10位以内と
発生率は低くなっています。このことは住環境がいかに大切であるかを実証したものと考えられ
浴室暖房器具や床暖房などの設置により部屋間での温度差をできるだけなくそうという
「温度バリアフリー」の考え方がもっと普及されるべきだと考えます。

そこで、入浴中突然死を防ぐための工夫について提唱しておきましょう。

     @,長湯はひかえ(全入浴時間20分以内)、湯温は38℃〜41℃に設定
     A,脱衣場や浴室を事前に十分暖める工夫
       浴槽のフタを入浴前に開けておいたり、浴室暖房器具や床暖房を設置する。
     B,二番湯入浴のおすすめ

 他の人が入浴した後は浴室も暖まっており、浴槽内の湯も熱すぎないため高齢者は

       二番湯入浴をすすめる。
     C,半身浴入浴の習慣を

 心臓に負担がかからないように半身浴をこころがけ、肩には暖かいタオルを置く

       などの工夫をする。
     D,体調不良時や食後、飲酒後の入浴はさける
     E,血圧降下剤、安定剤、睡眠薬の服用後の入浴はさける
     F,高齢者の入浴は血圧が比較的安定している夕方7時頃までに
     G,入浴前後には十分な水分摂取を
     H,高齢者が入浴の際はこまめな声かけを
     I,高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、てんかんなどの既往がある方は普段から注意を